お転婆で声だけは大きいけれど、
やせっぽちでちっちゃな女の子。
それが子供の頃の私です。
寄り道、道草が大好きで、
いつまでも子供っぽかった女の子が、
背が伸び始めたら、突然高い声が出るようになって、
今度は歌に夢中になりました。
ずーっと歌っていたい。
どこまでも飛んでいく声になりたい。
もっと気持ちよく歌えるようになりたい。
幸運なことに、早くからヨーロッパで一流のオペラを
たくさん見る機会に恵まれましたが、
自分の歌の未熟さを知るばかり。
聴衆の立場も良いかも、と
生の良い音楽を山のように聴いたのです。
あるとき偶然、不思議な先生とめぐり会いました。
「今までのことは全部忘れなさい。
のどが痛くなる歌い方なんて100年古いわ。
のどが痛かったら歌って直さなくちゃ!」
すました顔でおっしゃった先生こそ、
魔法使いだったのかも・・。
わけのわからないレッスンが続きました。
なかなか言うことを聞かない自分の体。
考えるほど迷路に入り込みます。
まるでぐちゃぐちゃになった毛糸玉のよう・・。
「頭が良すぎるからいけないのよ。からっぽにしてみたら?」
忘れ物や落とし物なら誰にも負けないこの頭が、
良すぎる頭なの?
それでも知らないうちに変わってくる体、そして声。
いつの間にか、不思議な息につつまれていました。
懐かしい大昔からずっと一緒にいた息。
あたりまえな息。ふつうの息。
でも、すぐどこかへ行ってしまいそうになる息。
いなくなると、とたんに頭やからだが苦しくなって、
耐えられなくなる息。
凄いけれど、どうってことない息。
まるで魔法のように動く、この不思議な息。
そうです。これは「まほうの息」!!
この不思議な息を使うと体は生き生きとなり、頭もすっきり。
疲れがとれて、何だか楽しくなってしまう。
自分の体の中にはとんでもない世界がかくれている。
ぼんやりと体の中が見えるようになり、
どこからか、体の声が聞こえてきます。
体の世界を調べようとすると、
すぐ現れるのは解剖図、難しい医学。
本のとおりに動かそうとすると、体は拒絶反応を示します。
ホラーはいやだ! 硬くなる体、痛くなる頭。
体の中の声が聞こえます。
「メルヘンでいいじゃない、難しくしなくたって。
難しくするから、体が動かなくなっちゃうんだよ。
いつの間にか、体の中はメルヘンの世界になっていました。
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